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​芸術を追求する「書」の世界をお話しします。

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書とは。

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書には、古典に学び伝統的技法で芸術作品を生みだす分野があります。

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書に込められた魅力、作品を構成する要素は多岐にわたります。

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芸術書の分野を研鑽する作家の作品はほぼ流通しておりません。

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​書の世界

​「書」「書道」は筆と墨で書くライティングの手法。日本や中国には古来より存在し、日本では義務教育の中の科目にもある身近な存在です。手紙やメモなどの日常使いから、企業やブランドのロゴとしても目に触れる機会が多い、伝統的な文字デザイン技法のひとつです。しかし、日本では日常的に使用する人は減少してきています。

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​「書」は、義務教育でも扱われる教養として学ぶものであるほか、手紙やメモなどとして書き留める実用、企業ロゴやブランドロゴなどの業務・商用利用、個人の趣味、パフォーマンス、額入のインテリアなど、多岐の用途があります。その中でも、「書」における芸術性のを追求し「道」として究めようとする分野があります。ここでは、その分野を「芸術書」と呼びます。

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​「書」の中の伝統的芸術分野

この「芸術書」としての書を制作する作家達は人生における多くのリソース(時間、資産)を、制作活動および制作に必要な精神活動や修練に費やしています。この、「一つの分野の中に教養・教育、実用、趣味、そして芸術が混在する」状況は、「音楽」に良く似た構造と考えると理解が容易です。

 

「書」の領域においては、この「芸術作品」として研鑽する分野があることは、海外はもとより、日本国内ですらほぼ知られていません。

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Artist: Keiun Tsujii

Snow is falling thick and thick, quietly.

"しきる降りしきる無心の雪"

H165cm x W121cm

「芸術書」の定義は、明確に線引きができるものではなく、最終的には個々の作品の芸術性の高さが全てです。ただしその芸術性を支える条件は存在し、以下2点が芸術書作品の制作に取り組んでいる作家の主な条件とも言えます。

1.中国または日本の古典に学び、伝統的技法を修練している

2.日本国内の著名な書道展覧会に、継続的に出品している

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作家が学ぶ代表的古典の一つ:牛橛造像記

 作品を制作する、もしくは練習をするという瞬間は、制作に極限の集中と没入をすることであり、現代で言うMindfulnessそのものと言えます。道具を用意し、墨を擦り、紙を敷き、筆を手に取り、揮毫する。その一連の流れは、座禅、瞑想、ヨガ、盆栽などと似た、精神を整え自分自身に向き合う瞬間です。

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作品を構成する要素

芸術書作品は、作家自身の言葉(詩など)を書くこともある一方で、過去・現代の詩人や哲学者、小説家や歌手の言葉も引用します。また、古典(過去の達人の作品)の臨書(模写)も作品として認められます。この言葉選びの瞬間も、作品作りの一部です。

 

作品の引用元になる文章を書いた作詞家・小説家に対して、作家は自分なりの解釈、技術、デザインでその言葉を再構成し、自分ならではの作品を作り上げます。他のアーティスト、過去の巨匠の創作を、自分なりの解釈、技術、デザインで言葉を芸術へと再構成するさまは、他の芸術領域とも通じるものがあります。

Artist (calligraphy): Keiun Tsujii

Do not regret things about my own life. "我事において後悔をせず"

Quote from "The book of Five Rings" by Musashi Miyamoto, Masterswordsman(16-17c) H41 cm x W70cm

芸術書作品の面白さは、その奥深さ、構成する要素の多様さにあります。日本語の文字は1文字ずつ単独で意味を持ち、さらには、それぞれの文字に対して人が持つイメージ(明るい、幸せ、縁起が良い、など)があります。書いてある言葉の意味、イメージ、そしてそれを作家として表現するデザインの美しさ、表現するための技術、加えて作品を作るにあたっての精神性や向き合い方が組み合わされて、奥深く一つの作品となるのです。

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芸術書の歴史とマーケット

書の芸術性については、日本では平安時代から論じられてきました。例えば平安時代初期には、日本書道史上最高の書家の3人とされる「三筆(さんぴつ)」、具体的には、高僧の空海(774-835年)、第52代 嵯峨天皇(786-842年)、貴族の橘逸勢(782-842年)が高く評価されています。その後も、天皇家をはじめ貴族の藤原氏、芸能一家の本阿弥氏などに優れた書家がいたとされ、芸術としての書は、日本の歴史においては皇族・貴族階級の修養として発展してきました。

A letter written by Kuukai (One of the "Three great calligrapher" in the early Heian period).

歴史上、最も優れた書家が9世紀の三筆であるという説があるように、その後は芸術書の分野は華々しくは発展せず、主に実用書道として発展してきたともいわれています。その後、19世紀末~20世紀初頭に、一部の書作家による「日本の書の“芸術性”を蘇らせる」という動きが生まれ、いわゆる現代芸術書の歴史がはじまりました。以降、貴族などの身分制度が消滅した後も、書作家たちがその文化を受け継ぎ、伝統から発展した現代アートとして、100年の時を経て現在成熟しつつあります。

1900年代初頭にこの、芸術的な書道を復活させる活動の中心となった人物の1人が、比田井天来(ひだいてんらい)氏という書家でした。当社代表・辻井樹の父で作家の辻井京雲氏は、その比田井天来氏に師事した作家・金子鷗亭氏を師として書を学びました。

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芸術書はマーケット不在

芸術書に取り組む作家たちに共通する価値観として、芸術家たるもの、作品で商売をするべきではない。清貧に、自身の道を追い求めるべきだ、という価値観があります。そのため、国内トップ作家であっても、実際に芸術家としての作家活動だけで生活を賄うことは難しい状況です。これもまた、有名な芸術大学などで学び世界的コンクールの頂点を目指す、音楽の分野と似た状況かもしれません。

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その影響もあってか、この芸術書の作品群は、高い芸術性を持つアートでありながら、現在、海外はおろか日本国内にもマーケットやいわゆる相場が存在しないと言って差し支えありません。作家を見極めて直接接点を持つか、一部の限られたギャラリーが取り扱っているのみです。また、そもそも「書」の世界に、芸術性を追求している分野があることすら知られていません。

この芸術書の素晴らしい作品群を、世界に送り出していくことが、当社のミッションです。

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